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【08】陰日向にいる隣人



サイズ  :A6
ページ数 :176P
価格   :1,000円
発行日  :2018年3月20日

伊吹さまとの合作作品。主人公(キキョウ&ユヅキ)とソーマを中心とした現パロホラー小説になっておりますが、あまり怖くない使用にしてありますのでご安心ください。

サンプル

 家に帰れないときがたまにある。それは決まって夕暮れ時で昼間か夜かもわからない時間帯だった。いや、自分は決して方向音痴ではない。それに毎日行き来しているのに道を間違える訳がないだろう。
 通い慣れた道を辿れば普通に帰れるのにどうしてだか帰れなくなるときがある。家から学校まで一時間もないというのに学校を出て、家に着くの二時間。酷いときは三時間かかってしまうときがある。
 じゃあその余分の一時間や二時間はどうしているのか? 残念ながらそのときは全く持って気づかないんだ。ただ少し時間がかかるなと思うだけで二時間以上もかかっているなんて思わないだろう。
 最初のときは気にはしなかったけど、何度か同じ事に遭遇すれば少しの違和感で一時間以上かかっているんだなというのはわかってきた。
 それでもどうしてこんな現象に立ち会わされるのかがわからない。決まっているのは朝や昼、夜がはっきりとわかっている時には絶対にないと言うことだろう。




 そう、最初に言ったように帰れなくなるのは昼か夜かわからない狭間の時間帯。特殊な言い方をするならば逢魔が時と言うのだろう。この世とあの世が混ざりあい。自分の知らない奇妙な世界がすぐ隣で大きな口をあけて待ちかまえている時間帯ともいえる。
 帰れなくなったときは逢魔が時に迷い込んでしまったのだと、そこから抜け出すことさえ出来れば帰ることが出来る。だから少しでも違和感に気づいたら、抜け出すための方法を模索していた。
 最初は神社に向かおうとしたこともあったがそもそも迷っているのに目的の地にたどり着けるはずがない。じゃあ電話で助けを求めようにもどうしてだか連絡を取っても全てがお話中で繋がらない。次には紙の地図を持ち出したこともあったがそれも駄目だった。自分は地図が読めない人間という訳ではない。地図と現在立っている場所を見比べてもどうしてだか当てはまらなかった。目の前には会社があるのに地図には現在立っている場所から数メートル先にあるということになっている。
 それでも見たことあるような近視感に惑わされてしまって結局は意味がなかった。
「なら、どうやって家に帰る方法を見つけたんだ?」
 いつも通りに部室を訪れ、静かにユヅキの話を聞いていたソーマが疑問を投げかける。ユヅキの口振りは今ではもう惑わされることなく家に帰ることができているような言い方だった。キキョウも気になるのか無言で頷く。
「それが本当に簡単だったんだよな」
 本当に簡単な方法と言いながらユヅキが取り出したのは携帯。
「GPS機能」
「GPS、機能…」
 まさか現代文明が出てくるなんて、思わずソーマは復唱してしまった。
「人工衛星を使用して自分がどこにいるのかを割り出すのがGPS」
 キキョウの説明の通りであり、人工衛星は地球上どこにいても電波を使用することで自分の位置を正確に割り出す事が出来る。
「道に迷わされるってのもさ、自分が知っている場所ならGPS機能を使えば簡単に家に帰ることが出来てさ」
 もしも妖怪や狸が化かしているなら、近代文明には適わないだなと。ケラケラ笑うユヅキにこちらは脱力するしかない。
「…ユヅキの言っていることは正しいと思う」
 正しいというのはどういうことなのか。自然とソーマとユヅキはキキョウが語り出すのを待つ姿勢となっていた。
「今みたいに外灯はなかった。昔は月明かりと火だけが頼りで、今よりもずっと闇は多かったと思う」
 確かにキキョウの言う通り、今と昔と比べれば外灯ができ、二十四時間
ずっと明かりがついている建物だってある。圧倒的に闇だけしかない場所は無くなって来つつある。
「けどさ、俺が迷う時間帯は夜じゃなくて夕暮れ時で…」
「外灯がついてない時間帯、だろ?」
 ユヅキはキキョウの指摘に何も言えなくなる。彼も思い当たる節があるらしく、視線を下に向けていた。
 そこでソーマは彼らの話を聞いたうえで自分でまとめた結論を伝える
「要するにだ。昔あった怪奇現象も現代の科学で解明できるようになった」
 もしくは妖怪の類から見れば自分達が当たり前に使用する現代機器こそが恐怖の対象に見えるて
 人魂だって昔は土葬が一般的だった。今の土葬と違ってしっかりとした棺ではなかっただろうし、さらには棺に入れるわけでもなく穴を掘って人間を埋めていたなんてことは普通にあっただろう。死体の腐敗が進むことでメタンガスが溜まり、静電気が原因で着火した。またはプラズマ現象とも言われている。
「…けど幽霊とかは昼夜関係なくいるけどな」
「場所も関係ない」
 この前もとキキョウが自身が幽霊を見たことを話だし、ユヅキが相づちをうちはじめる。またかとも思うがこれがこの部室での日常で自分ら三人の日常でもあった。自分に被害を合わないためにもソーマは先に釘を指しておく。
「それはもうお前らで解決してくれ」
 見える見えないの世界ではもうソーマが口を言える立場ではない。
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